
hikingに最も欠かせないものはやっぱり水である。暑くなってくると水の消費量がどんどん増えてきて、全部持っていこうとするとますます荷物が重くなってくる。 Day hikeならともかく、backpackingとなると水場の情報は最も重要な情報のひとつとなる。日本で水場というとなんとなくそのまま何もしないで飲めるという印象があるのだが、アメリカでの場合、原虫の一種であるGiardiaが広く拡散しているため、基本なんらかのtreatmentが必要となる。個人的には日本ではtreatmentに対する意識が低すぎるような気もするが、何れにせよ、treatmentする、しない、またどの程度treatmentするかは個人次第であり、自己責任ということになる。 水が元になる病気(water borne disease)を起こす元は一般に原虫類・バクテリア(細菌)・ウイルスの3つである。 原虫類は先に述べたGiardiaやCryptosporidium(クリストシポジウム)、アメーバ等、小型の微生物およびその卵などであり、tapeworm(サナダムシ)の様に体内で非常な大きさに成長するものもある。 バクテリアはサルモネラ菌・大腸菌(O-157等)・カンピロバクター・赤痢菌など、ウィルスはA型肝炎・ノロウイルス・ロタウイルスなどであり、食中毒などでよく耳にする名前だと思う。 水を美味しく飲むためだけでなく、こういった害毒から身を守るためwater treatmentを行うわけだが、treatmentの手段としてはa.)煮沸 – boiling、b.)濾過 – filtering、c.)薬剤 – chemical、d.)紫外線照射 – UV の4つが一般的である。 それぞれのPros/Consを簡単にまとめてみると表のようになる。
利点 | 欠点 | ||||||||
煮沸 | 殺菌手段としては最も効果的 | 余分に燃料が必要・湯冷ましの水は美味しくない | |||||||
濾過 | すぐに冷たい水が美味しく飲める | ウィルスは濾過出来ない | |||||||
薬剤 | 最も軽くて手軽 | 水の味が変わる・薬の有効化に時間がかかる | |||||||
紫外線 | すぐに冷たい水が美味しく飲める | 電池駆動・水に濁りがあると十分な効果が上がらない |
煮沸は表に書いたように有効性では一番であるが沸騰し始めてから少し沸騰を持続させる必要があるし、高度が高くなると沸点が低くなってしまうのでこの持続時間を長くする必要が出てきて燃料がいくらあっても足りなくなってしまう。 薬剤は非常に軽いためULハイカーに長く愛されてきたが、殺菌するのに時間を要するのですぐに飲めないのがいちばんの難点で、現在は他の手段のback-upとして使われることが多い。 Aqua-miraという2種類の薬剤を混ぜ合わせて使うものがもっとも有名で筆者も時々予備として持参するが、福島の放射能漏れでIodineなどの錠剤も有名になった。ハイターのような塩素系漂白剤を代わりにするのも安価なので一時期流行ったようだが、影響ない程度に薄めるとはいえ抵抗がある人が多いのか今はあまり聞かない。 紫外線は興味深い手段で水質に影響を与えず殺菌だけをするという点で画期的である。Steir Penというツールがよく知られているが、電動のためバッテリの問題があること、水中に小さなゴミがあるとその影にある細菌等を殺菌出来ない、一部寄生虫の卵等に効果が薄いなどの欠点がありあまり一般的でないようだ。 濾過はやはり水がすぐ飲めることが大きいのであろうが、以下の2点が改善されたことにより今では最もpopularな手段となった。 i.) 一昔前まではフィルタの最小径が甘く0.8-1.0um程度であったため一部の細菌や原虫の卵は目をかいくぐってしまう危険性があったのだが、現在では0.1um程度までfilterの目が細かくなりウィルスを除けばほとんどの細菌は濾過できるようになった。ii). 細かいフィルタに水を通すためにポンプで押したり、袋を力を込めて絞ったり、あるいは長い時間かけて濾過を待つ必要があったのだが、この抵抗もかなり小さくなり濾過するのが非常に楽になった。
代表的な製品はSawer Squeeze/miniで筆者ももう3年以上使っている。軽量なminiを取るか、絞るのが楽なsqueezeを取るかは個人の好みの分かれるところであるが市場を席巻し日本でもよく見かけるようになった。 昨年新しく出たKatadyn Be Freeはこの絞るという作業がさらに楽になった快適なツールなのだが、Sawyer squeeze/miniと異なり一般のボトルとはサイズの違うキャップ径を採用しているためほぼ専用の容器でしか使用できずボトルが破損した時や容器を付け替えたい(絞り込む為の容器では水たまりのような水をすくい上げることが難しい)ときなどの汎用性に問題があり一泊程度ならともかく長いbackpackingに持っていくにはちょっと心配だ。 ただし洗浄も非常に簡単なので、街中でも生水には不安があるときには非常に便利なツールであり、諸外国に旅行するときのよい友になると思う。 このようにwater treatmentというとfiltering一択の様になりかけているが、濾過も万能ではない。前述のようにウイルスは細菌などより遥かに小さいため、濾過ではウィルスを防止することは出来ない。気になるのであれば濾過+煮沸、濾過+薬剤または濾過+紫外線のような手段も考慮してみると良い。
また多少濁った水等はそのままfilterを通してはいけない。すぐfilterが詰まったりひどいときにはfilterが破損したりする。一度衣服や目の細かいガーゼなどを用いて事前濾過し、それを再度filterで濾過するなどの対策が必要になる。 また農薬などの化学物質で汚染されたものはどうしようもない。怖がってどんな水源も避けてしまうとhikeもできなくなってしまうが、あまりtreatmentを過信しすぎるのも問題である。汚染されていても人によって変わったり体調に左右されることもあるので最終的には自分で判断しよう。